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第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第2話 「風兎」 大阪城外堀、水上ステージ 大阪城の外堀の一部をそのまま武装神姫の水上ステージとして、利用したステージで障害物として杭や半壊したボートなどが置かれている。 エーベル「さて、はじめようか・・・ルールはシンプル。俺と戦え」 エーベルは黒い翼をピンと伸ばし、右手にはアルヴォPDW9を装備し、左手は腰に手を当てている。 赤い瞳がじっとアオイを見据える。 アオイ「気が済むまで戦うってことか、まあ分かりやすくていいな、そういうの好きだぜ」 尻尾のエンジンをブウウウンと唸らせる。心なしか悦んでいるかのように軽いリズムを刻む。 立花「アオイ、武装は何を持っていく?」 アオイ「三七式一号二粍機関砲が1門と千鳥雲切、1本」 立花「二粍機関砲!?あれは対重MMS用の機関砲だろ?」 立花は首をひねる。二粍機関砲は強力な機関砲だが、大きく重く取り回しが悪く機動性が高い神姫に命中させることは至難の業だ。flak171.5mm機関砲のほうがアーンヴァルのような機動性の高い神姫に命中させるには相性がいい。 アオイ「そんなこたァいちいち言われんでもわかってるわ!!ここは俺に任せろや!!」 アオイが立花に苛立ち怒鳴る。 立花「へえへえ、釈迦に説法でごぜいましたねェ!!すみやせんでした!!」 立花は苦々しい顔をしてアオイに武装を渡す。 アオイ「ごちゃごちゃうるさいわ!ヴォケ」 エーベル「おーい、まだかー早くしろよ」 アオイ「せかすな、慌てる乞食はもらいが少ないっていうだろ?」 アオイはゆっくり丁寧に武装を確認しながら装着する。 エーベル(こいつ・・・焦らずにしっかりと安全確認しながら武装をつけてる。相当慣れてるな・・・・) エーベルはアオイに一挙一動を注意深く観察する。 戦いは戦う前からすでに始まっている。相手の数少ない言動や行動、クセを読み取り、相手が何を考えてどういう行動を行うのか、事前に予測しながら戦術を考える。 エーベルはカマを賭けた。アオイをわざと挑発することで怒らせて雑に武装をつけるのかと予想していたが、挑発には乗らなかった。 つまり、こいつは武装の大切さ、口は自分と同じく悪いがリアリストだ、落ち着いている。そして気が付いている。 私がカマを賭けたことを・・・・ エーベル「・・・・・・・」 アオイ「悪いな、待たせたな!!考えはまとまったか?」 エーベル「いいや、気にしちゃいない、ある程度な」 油断できない、即効で決めよう、一気にスラスターを吹かして一撃離脱。攻撃がはずれたら急上昇して上を取って太陽を背にして再び一撃離脱。アスカ型は格闘性能に優れる、ドックファイトに持ち込まないほうがよいな、幸い、相手は重い機関砲を背負ってる。こっちの速度にはついてこれないだろう・・・・・・ エーベルの考えがまとまった。 アオイ「さあて、はじめようか」 エーベル「ああ」 ドルンドルンとリアパーツのスラスターを吹かせる。アイドリング、機関が主目的に貢献せず、しかし稼働に即応できる様態を維持しようとする動作。即応できるようにエンジンを温めるエーベル。 ヒュイイイイイインンインインイン、スラスターが風を斬り唸る。 アオイはニタリと笑う。 こいつなにが可笑しいんだ? バトルロンドの画面にテロップが流れる。 □黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス VS □戦闘機型MMS 「アオイ」 Aクラス 「ゲットレディ・・・・・」 バトルロンドの筐体のランプが点滅し無機質なマシンヴォイスが叫ぶ 「go! 」 ポオンとランプが光る。 エーベルは獣のように咆哮を上げ、呼応するようにスラスターが真っ赤に燃え上がり爆発的な加速力を生み出し、エーベルは一直線にアオイに向かって突撃する。 エーベル「いやあああああああああおッツ!!!」 両手でしっかりとアルヴォPDW9機関銃を保持し固定すると、アオイに向けて放った。 黄色の曳光弾の光跡がばらっと流れる。 アオイはくんと身体をひねるように大回りで攻撃を回避する。 エーベルはぐんとアオイとそのまますれ違い、そのまま加速を生かして急上昇を行う。 エーベル「よし、このまま太陽を背にして上位を取る!!空戦の基本だ」 一度上を取ってしまえばこちらのもの、相手は重い機関砲をぶら下げている。それに相手は大回りで大げさに回避した。機動性と速度で圧倒してしまえば・・・・ エーベルの目が見開かれる。 エーベル「な・・・」 追い越し、急上昇するエーベルの真横からさっとアオイが踊りだしスラッと左手で千鳥雲切を抜刀し、エーベルに向かって切りかかってきたのである。右手には重い機関砲がさっぱりなくなっている。 そこでエーベルは初めて気が付いた。 エーベル「コイツ!!はじめから二粍機関砲を捨てて身軽になるつもりでッ!?」 アオイ「でやああッ!!!」 すれちがいざまにアオイはエーベルのアルヴォPDW9機関銃を一太刀で真っ二つに切り捨てた。金属音が響き、 バラバラになった機関銃がぼちゃぼちゃと水面に落ちる。 エーベル「っち!!」 エーベルはすかさず、左肩に搭載していたM4ライトセイバーをすばやく抜き取り、アオイの斬撃に対応する。 開始から数秒もたたずにすさまじい攻防が繰り広げられる。 野次馬の神姫やオーナーたちはポカーンと口をあけている。 コウモリ型「おおおーー」 砲台型「すんげえー」 オーナー1「思い切りがいいな、あのアスカ型」 オーナー2「こんな空戦、滅多にお目にかかれないぞ」 ワシ型「エーベル!!押されるな!」 立花はカバンからペットボトルのお茶を取り出しくびっと一口飲むと、て2人の戦いを観戦する。 立花「ふむ、そういうことか、アオイ・・・はなっから機関砲なんて使うつもりはなく、ブラフだったのか、無茶しやがる」 ちょうど、そのとき公衆便所から一人の若い女性が満足そうな顔で手をハンケチで吹きながら出てきた。 斉藤「ふんふふーんふーん♪三日ぶりー三日ぶりぶりーーんと・・・あれ?なんか盛り上がってるわね」 ひょことバトルロンドのステージを覗くと、なにやら見知った顔の神姫・・・というか自分の神姫が戦っている。 斉藤「あれ?エーベル?誰かとバトルしてるのかな?」 エーベルは斉藤の姿をチラッと見つけて、一瞬動きが止まる。 エーベル「マスター!?いまごろノコノコと・・・」 アオイ「余所見してる場合かァ!?甘いぜッ!!!!!!!おらァッ!!」 エーベル「ッツ!!しまっ・・・」 ミス、非常に単純なミスだったが、アオイはそれを見逃さなかった。 そして次の週間、アオイは思いっきり頑丈な着陸脚で、エーベルの柔らかいお腹に突きこむように蹴りを放った。 ズム・・・鈍い音を立ててエーベルの腹に鋭い蹴りがめり込んだ。 エーベル「がはっ・・・」 エーベルの口から雫が飛び散る、アオイは千鳥雲切の柄で続けざまにガツンとエーベルの顔面を殴った。 アオイ「うおおおおおおおおお!!」 バキンとエーベルのバイザーが粉々に砕け散り、エーベルはショックで失神し、そのまま水面にたたきつけられるかのように墜落した。 どぼんっ・・・・ 墜落し戦闘不能となったので、バトルロンドの画面にテロップが流れる。 □黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス 撃破 アオイはひゅんと千鳥を振るい、カキンと着陸脚を鳴らす。 アオイ「足癖が悪くてな、スマンな」 斉藤「!?えーエーベル!?な、なにがあったの!?あれ?負けたァ?」 斉藤はイマイチ事態が飲み込めず、持っていたハンケチをぼとりと地面に落としてしまった。 To be continued・・・・・・・・ ・第3話 「牙兎」 トップページに戻る
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人物 名前:高城・ミッシェル・千尋 13歳 性別:千尋 ニックネーム:総帥 一人称:私(わたし) 二人称:あなた、きみ 科学者レベル:マッドサイエンティスト 一応主役『高城・M・千尋』と略してよい ブカブカの白衣と大きなリボンが目印の、愛すべき総帥様 若年どころか幼年ながら数々の学問に精通し、博士号まで持っているという厨二病全開の設定があるちびっ子 性別の項目がおかしいのは、設定を考えているうちに作者がわからなくなってしまったせいである 「いっそ、性別不明で良いや」と考えてしまったが最後、後は読者の皆様の想像にお任せする 『ミッシェル・サイエンス』をたった一人で取り仕切る恐るべきお子様 神姫 名前:「本名は非公開だ」 戦車型ムルメルティア 階級:少佐 一人称:私(わたくし) 二人称:貴官(きかん)、貴様(きさま) 忠誠度:総帥の為なら死ねる 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の頼れる隊長、コードネーム『α(アルファ)』 帽子や眼帯など戦車型の基本装備を身に着けているが、衣服はオリジナルの軍服に身を包んでいる 千尋は特別なバトルのとき以外は指示を出さないので、実質彼女が全ての指揮系統を担っている 千尋に絶対の忠誠を誓っており、危害を加えるものは容赦なく(人間、神姫関係なく)KILLするつもりでいる 身内以外に対する言動は非常に高圧的。ただし敵対の可能性がゼロになれば(口調こそ厳しいが)面倒見が良い、頼れる指揮官 名前:「非公開だ…例外なく、な」 砲台型フォートブラッグ 階級:大尉 一人称:自分(じぶん) 二人称:君(きみ)、お前 面倒事請負率:かなり高め 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の寡黙な副長、コードネーム『β(ベータ)』 常にバイザーつきの砲撃用ヘルメットを目深に被り、表情がよく見えない 常に櫛や手鏡を持っているなど、実は一番女らしい性格だったりする 後輩への指導は主に彼女の仕事で、曹長と一等兵は彼女が指導した バトルは主にスナイパーキャノンによる精密狙撃とハウィッツァー(曲射榴弾砲)による広範囲爆撃を使い分ける 名前:「公表の予定は無いであります!」 火器型ゼルノグラード 階級:曹長 一人称:私(わたし) 二人称:あなた 語尾:~であります 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の少々ズボラな突撃兵、コードネーム『γ(ガンマ)』 これといった特徴が無い、作者泣かせの困ったちゃん 十分なキャラ立ちができてないせいで、影が薄くなりがち が、語尾のせいで突然会話に参加してもわかりやすい バトルスタイルは後ろは気にせず突撃あるのみというものだが、なぜか生還率は隊の中でトップ 軍人気質…とは程遠いお気楽能天気の寝ぼすけ神姫 名前:「非公開にしろと言われてます」 戦闘機型飛鳥 階級:一等兵 一人称:わたし 二人称:~さん 癖:トリップ、大きな独り言 千尋の所持する神姫の一人『南十字隊』の想像力豊かな新兵、コードネーム『δ(デルタ)』 第一話、第二話と連続でメインを張っているが、主役ではない 外見的に特徴は無いのだが、トリップ癖とダダ漏れモノローグで起動から一週間という短い期間の内に強烈なキャラ立ちを果たした 初の空中戦力となるが、今のところバトル未参加なので実力は未知数 今後もエンジン全開で行ってもらいたい 名前:リュミエラ 兎型ヴァッフェバニー 階級:なし 一人称:あたし 二人称:~ちゃん、~くん ついやっちゃったこと:一等兵の拉致 千尋の所持する神姫の一人『特殊部隊』の狙撃、個人撃破担当、コードネーム『B(ビー)』 かわいいものが大好きで豪快なお姉さん 第二話での名前ばらしはわざとっぽい 好物は紅茶とお菓子 バトルは基本的に参加しないが、参加するときは本隊を陽動にして、孤立したものを狙撃するという非常に地味な戦闘スタイル もしくは、もっとも攻撃力の高い相手を誘き出す役目を担う かわいいものはどれだけ見てても飽きないようだ 名前:フェリシエナ イルカ型ヴァッフェドルフィン 階級:なし 一人称:私 二人称:個人名、知らない場合は呼ばない 悩み:豪快すぎる同僚 千尋の所持する神姫の一人『特殊部隊』の潜入工作、索敵担当、コードネーム『D(ディー)』 第二話でやたら喋っているが、本来は無口無表情 同僚のBによって本編中に本名が出てしまったために、キャラ紹介で非公開にできなかった 好みは和菓子に緑茶と、純和風 Bと同じく基本的にバトルは不参加だが、参加するときは潜入偵察と各種センサーによる索敵に徹する さらに必要があれば、拠点の破壊工作や罠の設置など、相手にとって地味な嫌がらせをする 自室の中と外で口数が極端に違う その他のキャラクター 砂木 丈助 34歳 性別:男 相棒:ルルコ(マオチャオ型) 一人称:俺 二人称:お前 相棒との関係:俺の嫁 『砂木探偵事務所』の所長、自称三十代半ばのナイスガイ 幅広いネットワークを駆使して『Forbidden Fruit』まで辿り着いたようだ 相棒のルルコに頭が上がらない ルルコ 猫型マオチャオ 相棒:ジョースケ 一人称:ルルコ 二人称:キミ 伏字:不使用 砂木の所持神姫…というより相棒、ファイル棚の奥も見逃さない 『Forbidden Fruit』の購入はこの娘の強い要望だったようだ 将来の夢は、冗談抜きで『お嫁さん』 企業紹介 ミッシェル・サイエンス 全十階建ての、中心街に立つには規模の小さいビル 千尋が経営している会社…会社と言っているが、働いている人間が一人しかいないため、実質自営業 どういうわけか国の営業許可が下りている 主な事業内容は、神姫のオリジナル武装開発と、神姫サイズの日用品や家電製品の製造販売 そのほかに、神姫用の特殊なボディも作っているが、こちらは発注を受けてから作り始めるオーダーメイド品。お値段も高額 さらに一般公開をしていない特殊なボディも作っているが、こちらは一体で豪邸が土地つきで買える値段になる 詳しい説明は下記を参照 秘密の地下室が存在しているらしい…… 製品紹介 素体 Michelle-001 unripe fruit (未熟な果物) ミッシェルの試作素体、専用コアパーツとのセットで提供 非常に軽く柔軟性に優れる反面、神姫素体としての基礎防御力がゼロに近いので、装甲を追加するなどの処置を取ってもバトルには不向き どうしてもバトルを行いたいのであればヴァーチャルによるものを推奨、なおかつ相当な熟練が必要(神姫、マスター共に) 非常に精密な技術で人間に『似せて』作ってあり、MMSの特徴である剥き出しの間接はなく、肌の質感はもちろん、神姫に必要の無いはずの生殖器まで精巧に作ってある パッと見ると1/10サイズの人間そのもの 食事が可能で、水分以外は体内で完全に分解できる 水分は発汗などで消費することができるが、貯蔵量を超えた場合は強制排出が必要 内臓器官や骨格は完全に再現できなかったため、『人造人間』とまではいかないが、「すでに神姫じゃない」と言っても反論の余地は無い さらに、思考も再現できなかったため、AIを純正のコアパーツからのトレースしている。 手持ちの神姫を当素体に移植することも可能 損傷、故障があっても神姫センター等での修復は不可能ですので、異常が発生した場合は当社まで連絡をしてください 武装は腕、足に換装が必要な装備と遠隔操作ユニット、大多数のリアユニットが装備できない 使用したいのであれば同社の本素体専用装備(別売り)を使用することになる 製作時にある程度ならば体系の変更が可能であり、注文の際にマスターの好みを聞いてから作り始めるオーダーメイド商品 制作期間は受注してから約二ヶ月かかる Michelle-002X forbidden fruit (禁断の果実) ミッシェルの特殊素体、専用コアパーツと衣服もセットで提供 Michelle-001の発展型であるが基本性能は同じである 最大の特徴は体のサイズが10倍だということであり、こちらは近付いても人間との区別がつかない 当然のことながら、神姫バトルに参加することはできない 見た目が人間そのものであっても、当然のことながら人間の医療機関で治療をすることができず、さらに神姫センター等で修理することもできない 異常のある場合は当社まで連絡をください こちらも製作時に体系の変更がある程度可能であり、注文の際に好みを聞いてから作り始めるオーダーメイド商品 製作期間は受注してから約四ヶ月かかる (※商品受け取りの際に質疑応答があることと、受け取り直後にデータチェックがあることを予めご了承ください) 神姫ヴァーチャルコミュニケーションシステム SVCS「にじり口の茶室」 人と神姫を同じスケールにして触れ合うシステム 専用ヘッドセットは全国の神姫ショップにて取り扱っている 神姫はクレイドルを介してシステムに接続、マスターは専用ヘッドセットを装着する事によってシステムに意識を転送する サイズは神姫側に合わせられるため、神姫とコミュニケーションをとる以外にも自身で武装の試用など、擬似的な神姫体験ができる ただし、かたや生身の人間、かたや武装を自在に操る武装神姫なので、パワーバランスは歴然としている システムに入る際は、自分の神姫との関係を一度見直してみる事 神姫との関係が悪いと、接続直後からボコボコにされることもあるかもしれない ……ちなみに、殴られるとちゃんと痛い 以下、話数が増え次第追加します 戻る
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凪さん家の弁慶ちゃん 「義経、準備は良い?」 「…はい、TR-2全システムオールグリーン…いつでもどうぞ」 「おっけ!じゃあいくわよ!皆!」 「「「了解!」」」 凪さん家の弁慶ちゃん/0 「TR-2」 「アーサー、ハンゾー、義経、状況を報告!」 「アーサー異常なし!」 「…ハンゾー、問題ない」 「義経、異常ありません」 「よし、アーサー、ハンゾーはそのまま前進、義経はユニット展開後待機!」 「「「了解」」」 今回もうまくやってみせる。私はそう誓った。 今回は「T3」として私こと義経はこのリアルバトルのチーム戦に参加していた。 しかし今回の戦いでは指揮を担当するマスターは一人という制約が課せられている。 なので通常、早坂未来が私に指示をだすのだが今回は渡瀬美琴がチーム全体の指揮を取っていた。 この大会でアーサーはTR-1という強化ユニットを装備、これは陸戦型アーンヴァル、または量産型ストラーフといった感じの装備で、脚部はアーンヴァル純正装備にストラーフの脚部装備を移植、そしてストラーフのサブアームのマニュピレーターを汎用性の高いものに交換し長さを調節したものだ。 その手には奇跡の剣という名の剣が握られていた。 そしてハンゾーにもこのTR-1ユニットが搭載され、こちらはカロッテTMPを二丁装備している。 そして私はこの二人とは違う装備を身につけていた。 TR-2 これは高威力の超長距離射撃を行う事を目的に、現存する神姫純正武装でアッセンブルされたものだ。 脚部はストラーフの脚部装備をアーンヴァルのブースターなどで固め右腕にはアーンヴァルのLC3レーザーライフルが二門装着されている。 しかし使用するのは一門のみ、あとの一門はレーザーの増幅器として機能する。 背部には吠莱壱式が二門。これは攻撃用ではなく、あくまでも緊急移動用としての装備である。 いちいちブースターを吹かすより実弾兵器の反動の方が始動が早いのではないか…という目的で取り付けられたものだ。 本当にそうなのだろうか? そして各部アタッチメントコネクターにはヴァッフェバニー用の背部タンクやジェネレーターが装備され、そのすべてをレーザーライフルに直結させる事によって限界まで威力を上げている。 はっきりいって神姫用の装備としてはあまりにも特化しすぎており、これで神姫といえるのだろうかという疑問も生まれてくると言うものだ。 しかしこれが後に世に出る姉妹達への開発データになるのならば、甘んじて受けるとしよう。 「義経、TR-2装備完全展開完了」 「よっし!相手方に一発でっかいのをお見舞いしちゃいなさい!」 「了解!エネルギー充填開始…収束率増加、ロックオン完了…発射!」 ヒュオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン… 砲身にエネルギーの渦が形成され ビャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!! 空気を切り裂く青白い光が照射された。 その太さは通常のレーザーライフルのものに比べるとはるかに図太く、禍々しい。 その光が敵チームを包み込み一瞬にして行動不能にした。が、何とか逃げ延びた神姫がいたようだ。 「どう?」 「右腕に衝撃による不具合が少々、でも予測範囲内です」 「わかった、次いける?」 「もちろん!」 「よし!じゃあ第二射!てぇー!!」 「了解!」 なんだ、楽勝ではないか。この装備初弾である程度敵チームを壊滅させれば第二射までアーサーとハンゾーが私を護衛してくれれば勝利は間違いない。 または右腕への損傷を最低限にするならばこのまま私は待機して、あとは二人に任せても良い。 「TR-2はほぼ成功ですね」 「ええ、中々良いわ」 「よし、第二射充填完了…いきます!」 ひゅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ… 再びエネルギーの渦が形成される。そして青い光が大地をえぐる… はずだった。 ビビー!!ビビー!!ビビー!! 「!?」 「義経!?」 ライフルの砲身部から異常。あまりのエネルギー量にライフルの許容限界を超えたらしい。 そのエネルギーの一部が逆流して、システムに過大な負荷を与えている。 「く、ライフルへのエネルギーを全カット!砲身切り離し、緊急離脱ブースター展開!」 ライフルからエネルギーの光が漏れる。その光が私を包もうと迫ってくる。 「!く…腕が…!」 「早く離脱しなさい!義経!?」 「そうしたいですが…無理みたいです。腕が挟まって…抜けない…」 崩壊を始めたライフルなどのパーツにより、私の右腕は付け根からがっちりと挟まっていた。 「あぁもう!!諦めるなぁ!!」 「くそ!くそぉ!」 こんなところでスクラップになってたまるか!! 「こうなったら…!!」 私は脚部に装備されていたナイフを手に取り 「うあぁぁぁぁ!!」 自らの右腕に突き刺した。 「っくぅぅぅぅ!」 なんという激痛か…しかし! 「まっけるかぁぁぁぁ!!」 バチィィィ!! 左腕で右腕を抉り、無理やり引き剥がした。 そしてブースターを噴射。瞬間ライフルユニットが爆発。その爆炎が迫り私を完全に包む。衝撃と高温で体が焼かれる。しかし間一髪スクラップは免れたようだ。 赤い光に包まれていた景色がドームの光りに照らされたいつもの景色に戻る。 ブースターはすべて焼ききれたようで噴射できない。 そのまま自由落下により大地に叩きつけられた。 ドッザァァァッァァァ!! 「ぐぅぅぅがはっ!!うが、あぁ…くぅ…」 状況は芳しくないな…右腕破損…頭部に損傷…両脚部損壊…か…まぁAIに以上は無いようだ…。でも戦闘は無理だな…。とりあえず活動限界か…。 『ピピーピピーピピー試合中止、試合中止』 ドーム内に響く音声、私の意識はそこで切れた。 「む…」 充電完了…各部異常なし…生きている…のか 「…つね!よしつ…!!義経!」 「く…未来…?」 私の目の前にはマスター、早坂未来の顔があった。 「起きたぁ!」 「義経!」 「…起きたか」 「…ふむ」 「おぉ!」 「う…う~ん…!?」 「気付いた?その体」 「頭部形状…それに右腕が…これは…」 「アドバンスドユニット」 その声の先には渡瀬美琴。 「?」 「衝撃対策として右腕間接を汎用強化間接ユニット「リボルバージョイント」に換装、そして頭部ユニットを換装して情報収集能力を上げたの。本当はバイザー式にするつもりだったのだけど、損傷がひどかったから丸ごと換装したんだけど…どうかしら?合わなかったら既存パーツに交換するけど」 アドバンスドユニット…体に施されたマーキングライン以外は既存の素体であった私の体が…強化された? 確かに視覚ディスプレイに追加された項目がある…これは今後装備されるTRシリーズのためか…?それに右腕…今回の戦闘での意見がフィールドバックされたのだろうか…。 「合わないかな?」 「いえ、そんな事はありません」 「そう、よかったぁ~」 「それに合わなかったら合わせます。それが私です」 「ふふ、そうね。まぁ今日は一日ゆっくりして慣らしていって」 「はい、分かりました。ありがとう、美琴」 「はいな、んじゃまた明日」 「ええ、また明日」 「有難うございました、先輩!」 未来が美琴達にぺこりとお辞儀した。 そういえばここは…あぁ部室か…。 明日からまたさまざまな装備を試す毎日が始まる。武装…決まった装備が無い私にとっては毎回毎回ワクワクする時だ。 そりゃ今回みたいな危険は常に付きまとう。 しかし誇りに思う。 私に装備された物がブラッシュアップされ、次の世代の神姫の武装になる…。 そんな特別な関係性に…。 渡瀬美琴は既存部品を組み合わせて新たな武装を作り出す優秀な装備開発者だ。 そして神姫開発の上層部に父親がいて、武装神姫の初回モニターでもある未来…。 私に装備されたものは情報として逐一開発部に送信される。 今回のTR-2がどうなるのかは分からないが…。 この時、砲撃用に特化した装備…という部分が後のフォートブラッグへと繋がることは私達はまだ知らない。 知る事になるのはTR-5が開発され、新たな仲間、弁慶が来てからの事である…。
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霧に包まれた公園に爆音が轟き、何本もの水柱が上がる。 その上がった水柱を避けるようにアメティスタは泳いでいた。 「・・・ちょこまかと!」 ルシフェルは両腕のリボルバーキャノンを連射し、アメティスタを捉えようとするが水に入った彼女にあたるわけも無い。 撃ちつくし、即座にリロードし池・・・というよりは湖を見る さっきからアメティスタは逃げ回るだけで何も攻撃をしていない。それは単純に彼女の武器がプチマシィ~ンズしかないからなのだが・・・ルシフェルはそれに気づかない。単に腰抜けなだけだと考えている。 「攻撃してこないなんて・・・一体ここに何しに来たの?」 ・・・・・戦いに来たんだけどね 池の底で、アメティスタはそう考える。 今、彼女は弾丸の届かない水の中でバックパックから取り外したコンソールを弄っていた。その顔は悪戯好きな子供のようだ。 彼女は水に入る前にバックパックを陸に置いて来ている。よって今の彼女の武装は遠隔操作のプチと手に持ったコンソールだけだ。 ・・・普通の神姫ならすぐに負ける貧弱な武装だろう。普通の神姫ならば。 しかし彼女は、ある意味において他の神姫とは一線を記す戦闘スタイルの保持者であった。 他の神姫が戦闘員ならば、彼女は徹底した非戦闘員だ。 ・・・うん、こんなものかな コンソールのキーに何かを打ち込んでいたアメティスタが顔を上げる。 日の光が落ちてくる、ゆらゆらと揺れる水面の向こうにはルシフェルが不機嫌な顔で銃を構えているのだろう。 アメティスタはその表情を想像して少し笑う。 ・・・・さぁ、行こうか そうして彼女は、水面へ向けて泳ぎだした。 ホワイトファング・ハウリングソウル 第十四話 『視覚素子は嘲う』 ルシフェルは自分の身に何が起きたのか理解できなかった。 水面を狙っていたら、いきなり右側からの銃撃を受けたのだ。 「――――――っ!?」 自らの背の羽根でその全てを防いだが、動揺は抑えきれない。 アメティスタは水から上がっていないし、プチマシィ~ンズだとしたら火力が強すぎるのだ。何よりアメティスタは全く武装していなかった。唯一背負っていたバックパックだって今そこに放置されている。そうすると・・・・今の攻撃はいったい誰が? 「・・・・彼女のお友達、じゃなさそうね」 ここに来る前から彼女は周囲に気を配っていた。もちろん公園の周囲に配置されたプチには気づいていたが動いていないため無視した。まさかそれでは・・・否、それはない。ルシフェルの頭部に取り付けられたアンテナは先程から敵の姿を捉えてはいない。霧のせいで見づらいが、肉眼でも敵の姿など見えていないのだ。 「・・・・だったら、今のは一体?」 と、彼女の正面にいきなり人影が現れる。 反射的にルシフェルは銃を捨て、思いっきり殴っていた・・・が 「!? 手ごたえが・・・!」 殴った瞬間、人影は霧散する。 するとすぐに右側に人影が現れ、ルシフェルは残った左の銃で人影を撃つ。しかしまたも人影は霧散する。 今度は左に現れ、銃を向けるまもなく斬りつけられる。辛うじてチーグルでそれを防ぎつつ右手で相手を殴るも、また霧散する。今回は辛うじて紫色の髪が見えたが・・・・ 「幻影!? でも斬りつけられた・・・なんなのこれ!?」 「傷つけようのない敵。避け様のない攻撃。心の奥に潜む獣。・・・そういうものだよ」 背後からの声にルシフェルは腰のデスサイズを引き抜き振るう。 その死の鎌は確かに背後にいたアメティスタを両断した。・・・はずだった。 「酷いな。いきなりこんな事されたらびっくりしちゃうじゃん」 地面に倒れたアメティスタが平然と言う。 腰から両断されたにも拘らず彼女は痛みを感じていないようだった。 「いくらなんでも出鱈目すぎる・・・・! なんなのよアンタ・・・!!」 左のリボルバーキャノンをアメティスタに向け連射する。 跡形もなくなったアメティスタに、ルシフェルは僅かに安堵する。・・・するのだが 「―――――――――ッ!?」 今度は真後ろから、“アメティスタ”に斧で斬りつけられた。 防ぎきれずにダメージを負うがルシフェルは即座に距離をとり、銃口を向ける。 その瞬間今度は左から斬りつけられ銃を落としてしまう。 「っ! なんだってのよ!!」 痛みを堪え翼でなぎ払う。 その瞬間右側から斬りつけられ傷を負う。 これ以上のダメージを避けるためにルシフェルは黒い翼をはためかせ、空へと逃げる。 流石にアメティスタはもう負ってはこなかった。 「(ちくしょう・・・! なんなのよ。瞬間移動でもしてるっての!?)」 考えられる可能性は二つ。 一つは純粋にアメティスタの移動速度が異常な場合。しかしこれは彼女の脚部が陸上移動にむかないことから却下される。そうなると唯一残った二つ目の可能性、それは・・・・ 「・・・まさか、もう一人いる!?」 そう、そう考えればつじつまが・・・合うわけもない。 初めに倒した人影は手ごたえがなかったがそれ以降は確かに手ごたえはあった。そうなると確かにもう一人くらいはいてもおかしくはないが・・・・それにしたって全方位からの攻撃をするには人数が足りなさ過ぎる。なによりこのバトルは二対二で行われているのだ。これ以上人数が増えることは無い。 となると、一体・・・!? 「残念。時間切れだよ」 後頭部から、いきなりの衝撃に耐え切れずにルシフェルは地に叩き付けられた。 「ガ――――――ッ!?」 ルシフェルは思わず叫ぶ。全身を強く打ち立ち上がることも出来ない。 「もう少しおりこうさんだったら簡単に気づいたかもね」 地に伏せるルシフェルの顔を、池のほとりに座っているアメティスタが覗き込んだ。 「あ、あんた・・・!」 「おっと。もう攻撃するのは止めてよね。するだけ無駄だからさ。・・・うん、実際キミは強かったよ。まともに戦ったら負けてたのはボクだ」 アメティスタはそういってルシフェルのリボルバーキャノンを拾う。 小さな彼女の手には明らかに不釣合いな代物だった。 「・・・結構重いねこれ。さて、それでは最後に手品の種明かしをしましょう。ボク達は機械かな? 人間かな?」 「・・・機械、だろ」 「当たり。さてここでボクはもう一つ質問をしよう。ボク達の頭には何が詰まっている?」 その問いにルシフェルは僅かに考える。 「・・・・・機械が詰まっている。人間の脳に近い動きをするためにね」 その答えにアメティスタは満足そうに笑う。 「その通り。でもさ、機械である以上、セキュリティは万全じゃないよね。コンピューターもそうだ。ネットにアクセスすればいつだってウィルスの脅威に曝される」 「ウィルスだって? わたし達は・・・まさか」 「そのまさか。最初の攻撃でキミにウィルスを仕込んだのさ。・・・キミの目、盗ませてもらったよ」 そういってアメティスタはコンソールをかざす。 そこに表示されているプログラムは『インターセプター』。感染者の視覚情報に入り込み、幻影を見せたり特定のものをそこに無いかのように見せるウィルス。そして一番重要な点は、このウィルスに感染したものは“幻影と現実の区別がつかない”点にある。 つまり・・・・ 「最初に幻影だと思ったのは半分正解で半分間違い。たしかにインターセプターは幻影を感染者に見せるけど、同時に幻影と現実を同期させる。切られれば痛いし撃たれても痛い。でも・・・・痛いだけで、キミの体は無傷だよ。さっきの落下以外はね」 ルシフェルは目だけを動かして自分の体を見てみる。 そこには切り傷なんて微塵も無い、綺麗な体があった。 「・・・最初から・・・わたしを叩き落すつもりで・・・?」 「そゆこと。プチは霧だしてただけだしバックパックはただの中継ステーション。キミがボクと戦って勝ちたいなら、バックパックを破壊するか公園を爆撃でもすればよかったんだ。・・・・さて、ここまで来てボクは銃を撃つつもりはない。降参してくれないかな?」 アメティスタはそういって微笑む。 その手に握られたリボルバーキャノンはよく見ると細かく震えていた。 このくらいなら・・・ルシフェルは一瞬考えるが、銃口が避けようのない距離で突きつけられているのを見て考えるのをやめた。 「・・・・降参だよ。まさか戦わない武装神姫がいるとはね」 ルシフェルのその言葉共に、彼女の体はデータの塊になって消えた。 前・・・次
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「…見たトコバッテリー切れだな。一応ちまちま充電した形跡はあるが、満充電まではしてないね。おおかた古い型式のクレイドル使ってたんだろうさ。」 ホビーショップ『165-DIVISION』。 中央線沿線でありながら、イマイチ開発が行き届いていない某駅の南口の古いビルの地下にその店を構える、武装神姫中心のダーク系ショップだ。 大して広くも無い店の中は壁から床から真っ黒に塗られ、時々返り血を模したものか真っ赤な塗料をブチ撒けてある。 商品にしても、これまた隅から隅まで店オリジナルと思しきオノだ鉈だチェーンソーだスパイク付き首輪だ(しかも全てご丁寧に返り血ペイント付き)と、アングラ系アクセサリーで満載。 それも全てが神姫向けだというのだから呆れるというか徹底しているというか。 ……まぁよく見れば正規部品も半々ぐらい置いてあるので、一般客も考慮はしてるんだろうが。 これで実は公式公認店舗なんだという。 入り口には蜘蛛の巣やらドクロやらのステッカーに混じって、公式小売店舗を示すラベルが燦然と浮いていた。 なんでも秋葉原の専門店や、その筋じゃ有名なコギトだかエルゴだかいうホビーショップに比べれば規模は小さいものの、そこそこのバトルスペースまで確保しているってんだから驚きだ。 …一体どこにそんな金があったのやら… そして目の前では、カウンター越しにオーナー兼店主である高校時代の友人がこっちをジト目で睨んでいた。 片目に刀傷みたいな珍妙なメイク。服のあらゆる所にチェーンだのリベットだのじゃらじゃらつけたその姿は一種異様で、当時の真面目そうな雰囲気はカケラも残っちゃいなかったが。 「…で、慎。十年ぶりの再会だっつのに、挨拶もそこそこに「神姫直せ」てのはいくらなんでも酷くない?しかも営業時間外だぜ?」 「……あぁ。悪かった。スマンな縁遠。」 俺のあんまりといえばあんまりな返しに、友人…縁遠は溜息をついて苦笑した。 「まぁキミらしいっちゃらしいけどさ。とりあえずあの子だったら大丈夫だよ。中途半端な充電繰り返したせいで電池ヘタってただけだと思うから。」 当時から変わらずこっち方面の腕は確かなようだ。見た目はどうあれ、専門ショップを開いているのは伊達じゃないらしい。 「あとは…ホコリとかで結構汚れていたからクリーニングしてあげて、新しい電池に換えてきちんと充電してあげれば問題はないよ。…それで、こっから本題なんだけどさ。」 来た。握った手に嫌な汗を感じる。 「あの子はキミの神姫じゃないな?どこで拾った?」 縁遠はまっすぐにこっちを見た。 そこだけは昔と変わらない、澄んだ目をしていた。 「…実はな」 ここで俺は、サムライに逢ってからの事を包み隠さず話した。 そして、一つの頼み事も。 「……そりゃ本気で言ってんの?」 「冗談で言えるかこんなこと。実際、お前くらいしか頼れないんだよ。」 しばし睨み合い。 最初に目線を外したのは縁遠だった。 「わぁかったよ頑固モノ。できる範囲でやってやるさ。」 「……済まない。」 「でも、僕ができる事は調べるだけだ。そっから先は関与しない。いいね?」 「ああ。」 …と、一息ついたら腹が鳴った。 そういや晩飯食ってなかったなぁ… 「飯も食わずに来たのか。」 「うっせーよ笑うな。」 「まぁちょっと待ってな…ドリュー、ステーシー、お茶ー」 縁遠が呼ぶと、カウンターの奥の方からかたかたと…紅茶とスコーンを持った神姫が二体出てきた。 片っぽは浩子サンのモモコと同じゾンビ型。 もう片っぽは、ゾンビ型と同時に発売されたという処刑人型だ。 ゾンビ型同様ビジュアル面での問題があり、全くと言っていいほど出回らなかったという。 …こうもちょくちょく見かけるんじゃ、レアリティもクソもないんだがな。 店の雰囲気にやたらマッチした二体は、ゾンビ型の『ステーシー』は縁遠へ。処刑人型の『ドリュー』は俺の方へと背中につけた大きな腕で、器用にお茶の準備をした。 店の雰囲気にまるで合わない、上品なティーカップの中身を一口すする。美味い。 一応礼を言うとドリューは照れたのか、頭につけたホッケーマスクを目深に被って、ギギギだかゲゲゲだか金属を擦り合わせたみたいな音を立てた。 ……やっぱり笑ってんだろうかコレは。 「どうだ、可愛いだろ?」 カカカカカと笑うステーシーを前に、心底得意げに言う縁遠。 …すまん。やっぱ俺にはよく解らん。 その後、サムライの処置が一通り終わる頃には終電も過ぎ。 おまけに「遅ればせながら開店祝いだー!」とか喚く縁遠にしょっ引かれて、朝まで飲むハメになる。 まぁ久々に会ったことには違いないので、なんだかんだで日が昇るまで飲んで語り明かした。 翌朝。調べがついたら連絡するというので、俺はサムライと充電用クレイドルを持ち家へ帰った。 …ちなみに言うまでも無く、補修代及びクレイドル代はしっかり取られたが。商売人め。 --- 「……ん?」 「お、起きたか。どっか痛いとことか動ないとこむぐゃ」 問答無用で蹴られた。 「いきなり何しやが…!」 「なんで助けた。」 硬い口調だった。……まぁ当然か。 「今までだってアタシ一人でやってきたんだ。いつでも野たれ死ぬ覚悟くらいはあった!手前ぇなんぞにお情けもらう謂れは…!」 「だったら俺の前で倒れんじゃねぇよ。」 今度はサムライが黙った。 「…俺はな。お前さんがどこの誰かは知らんし、どこで野たれ死のうが知ったこっちゃねぇさ。」 「………」 「でもな。助けられんのが嫌なら俺の見てる前で倒れんな。目の前で死なれたりしちゃ寝覚めが悪ぃっつーか、飯がマズくなるんだよ。」 「………」 お互い黙り込む。沈黙が痛い。 「……ンだよ。なんか言えよ。」 「偽善者。」 「否定はしねぇ。」 「何様だってんだ。」 「俺様だ。文句あるか。」 「馬鹿だろ手前ぇ。」 「男は大体、馬鹿なモンだ。」 「青瓢箪。」 「職業病だ。」 「唐変木。」 「それがどうした。」 「甲斐性なし。」 「…関係ねぇだろ。」 「種無しカボチャ。」 「ぶっ壊すぞガラクタ!」 また沈黙。 そして、サムライは堪え切れずに吹き出しやがった。 「………くっせぇ台詞。」 「…………うっせ。笑うな。」 何故か笑うサムライに、耳まで真っ赤になった俺がいた。 ……多分これが一生の不覚ってやつなんだろうか。 エピローグへ
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春の風にしてはやや肌寒い感じが残る鳳凰カップ初日 雲ひとつない日本晴れがまさにイベント日和といった感じだろうか 予選開始時間は十時 初日である今日の予定はバトルカップ予選とブース出店 ちなみにバトルカップの解説は決勝リーグからとなっている だから今日の俺にはあまりやることがないのだ 本来イベントの始めにおこなわれる開会式は軽く開会宣言のみで、主催者挨拶なんかは決勝リーグ前におこなわれるらしい 御袋曰く「運動会前の校長先生のお話ほどやる気が無くなるものはないからねぇ~」とのこと 俺はその判断に激しく同意していた 「グッジョブ、御袋…」 そう頷く俺の両隣には 「うっわぁ~スッゴイ人の数~」 「こんなに大掛かりなイベントだったのか?」 と人間大のマオチャオとアーンヴァル 言わずもがな、神姫のコスプレをしているインターフェイス使用中のミコとユーナである ………やっぱり神姫なのに神姫のコスプレするのってなんかおかしいよなぁ いや、俺がさせてるんじゃないよ?よいこのみんなならば犯人が誰だか解ってくれるよな? そう、犯人は勿論今回の祭りの主催者にして俺の宿敵… 「ふおっほっほ、やはり似合っとるぞ美子ちゃん、優奈ちゃん!」 うちのクソジジイさ 「兼じぃだ~」 「でたなジジイ」 「くたばれジジイ」 「登場して間もないのに凄いブーイングじゃな…」 美子、優奈、俺の三段コンボは老人の心を少し傷つけた 「当たり前だ。なんたってこいつらにこんなかっこさせにゃならんのだ」 いくら神姫のイベント会場にいたとしてもこいつら二人の格好はかなり目立つ それとともに俺も一緒となると吊るし上げをくらったようなもんだ 正直周りの目線がキツイ オイコラ、勝手に写メを撮るな 「祭りには可憐な華が必要じゃろ。二人には祭りの盛り上げ役として力を貸してもらいたくてのぅ」 可憐な華? こいつ等が? うん、それじゃあよいこのみんなもお兄さんと一緒にジジイに並んで二人の姿を観察してみよう!! 俺は前にも見たことはあるんだが、この際上から下までジックリと観察してみることにする うちの三人の中では一番小柄な美子 控えめな胸、細身の体、そしてくりくりとした目のはちょっと危ないロリ属性 「にゃ……お、お兄ちゃん…」 すらっと伸びた両足、結構ボリームのある胸、オレンジ交じりの髪から覗く首筋、赤くなった頬に少しつり目のツンデレ属性、優奈 「あ、アニキ…目が……えろいぞ…」 というか二人ともモジモジと身悶えするんじゃない お前らのほうがよっぽどえろいからさっきよりも周りの視線が集まってるじゃないか 「後は毎朝優しく起こしてくれる幼馴染ぐらいは欲しいのぅ」 ボソッと老人らしからぬ発言 まぁこれは今に始まったことじゃないんだがな… 「老人の朝は早いから起こしに来るのは無理なんじゃねぇの?」 しかし、うちで朝起こしてくれる幼馴染キャラといえば俺の左肩に座っている奴が最も近かろう 「御爺様、私はよろしいのですか?」 一人だけ神姫素体のノアである 三人の中じゃ最も俺との付き合いは長いし、お互いのことも相当理解してる 朝起こしに来てくれるのもノアだしな もっとも、俺の中じゃ炊事に洗濯、掃除に買い物、何でも来いのクールな万能メイドさんのイメージが濃いのでそれもどうかと思ったりするのだが… 「ノアちゃんはいいんじゃよ。明人がこのイベントに参加するんじゃ。神姫を一人も連れとらん明人なんぞに価値はありゃせんわい!」 物凄く酷い言われようだがもっともなので言い返しはしない こちらとしても武装神姫のイベントに神姫も連れず、代わりに神姫のコスプレしている女の子を三人も連れて歩くウザイ野郎になることは御免こうむりたいのだ 「ノアちゃんは一番顔が知れとるからの。それにほら」 ジジイがノアにパンフレットを指差してみせる 俺たちは四人ともジジイの指差すパンフレットの位置を覗き込んだ そこはブース案内の國崎技研の紹介箇所 「國崎技研……ああ、ミラコロを共同開発してるとか言ってたな」 「そうじゃ。しかしあれからさらなる機能が追加されたんじゃ。國崎にできる若造がおっての…と、今言いたいのはそこじゃないんじゃ。内容を読んでみい」 ジジイに言われるがままもう一度パンフレットに目を落とす 「ヘンデル及びグレーテルのデモ、体験。グレーテルを使ったお菓子作りコンテスト。優勝商品はグレーテル通常版……お菓子作りコンテスト?」 「うむ、そこの『グレーテル』とは神姫用のシステムキッチンのことじゃ。なかなか小粋な宣伝をしよるわ。ふぉっほっほ」 神姫用のシステムキッチンねぇ… あいにくうちの神姫は普通のキッチンで毎日俺にメシ作ってるからなぁ… っておい、まさか…… 「ジジイ…コレにノアを出させようとか思ってんだろ?」 「薦めてみようと思っとるだけじゃ。無理にとは言わん」 なんだ…良かった ノアが出たら反則気味に有利になっちまうからなぁ 「無理に言わんでも結果はでとるからのぅ…」 「は? 何か言った…」 そこまで口にすると左肩から物凄い気配を感じる 悪い予感が渦巻く中、そぉっと視線を左に移すと… 「お菓子作りですか……ふふふふふ、腕が鳴ります」 地獄の番犬様が両目を閉じて微笑んでいらっしゃいました 燃えてらっしゃいます 橘家の台所番長様が闘志を燃やしてらっしゃいます 橘さんちの番犬さん、お菓子作りコンテスト参加決定… それから少しの間ブースを回る 大手企業各社に噂のアマチュア『F-Face』と三屋八方堂 凄い人の波でそれだけ回るとかなりの時間が経っていた バトルカップ午前の部が終了したことを知らせるアナウンスを聞き、俺たちは足を止める 「もうこんな時間か…」 「ひとまずアルティさんたちと合流しますか?」 「そうするか…」 携帯を取り出すと葉月からのメールが一件入っていた ブース、喫茶店LENに集合!(*^▽^*) 簡潔に記された用件と最後に顔文字… 「コレはあれだな。嬉しいけど内容は直接話したくてとり合えず早くメールしてしまえと……」 「よくわかるなアニキ…」 「まぁ一応あいつの兄貴だしな。とり合えず今のところ全員勝ってるみたいだ」 パンフレットを持っているノアのナビを頼りに待ち合わせのブースに向かおうとして思いとどまる 「おっと、おまえら…そのままだったらまずいな…」 「あ、葉月んがいるんだもんね~」 ノアのインターフェイス時は紹介してあるから問題ないのだがこの二人はまだだったりする というか説明するのがめんどくさい 「じゃあ鳳条院のブースまで戻るか?」 ミコとユーナのために鳳条院の企業ブース兼、総合本部の裏にロケバスを用意してもらっている そこで神姫素体とインターフェイスの交換を自由にできるようにとのジジイからの処置だ しかし、そこまで戻るのか…面倒だが仕方がない 少し遅れるとメールを早打ちすると若干早歩き気味で本部へと歩き出した 「兄さん遅いよ~」 予選も休憩時間となり、出場者や予選観戦客もブースの方へと移って来たので人の波も混雑して約束のブースまで15分もかかっちまった オープンカフェになっている喫茶店LENはランチタイムともあって大盛況の様子だ 「わりぃ、ちょっとあってな」 俺用に用意していてくれたのか、葉月とアルの間に空いている席に座る 「こっちにいたならそんなにかからないでしょ?」 一度本部に帰ったとも言えず、誤魔化すようにウェイトレスの男性を呼んで注文する ノアとミコはチキンサンド、俺とユーナはカツサンドのコーヒーセットだ 「で、調子は?」 俺の一言に全員がニヤリとする こりゃ聞くまでもねぇみたいだな 「無論、勝っている。私達はAグループで三戦三勝だ」 「予選は何試合だったけ」 「全四試合、それに勝ち抜けば決勝リーグにいける」 なるほど、アルとミュリエルは決勝リーグまで王手をかけているわけか… 「俺達はJグループで二勝中だ」 「私達も同じく二勝。グループはMで、次が三戦目です」 「私達はアルティさんと一緒で試合がスムーズに進んだから次で最後だよ。あ、グループはBね」 とり合えずグループは分かれたみたいだな 決勝リーグまで同士討ちということはなさそうなので一安心か 運ばれてきた昼食は物凄く美味かった ちらっと特設カウンターの方を見るとここのマスターであろう女性が黒葉の学生となにやら話しながらコーヒーを淹れている うをぅ…なかなかの美人だぞ 昴が気に入るわけだこりゃ… とぼんやり考えながらマスターを見ていた俺の両太股が葉月とアルに抓られた その後、食事を終えてから皆と別れる アル達は午後の予選開始までにはまだ幾分か時間に余裕があるらしく、予選会場に近い大手企業の方を見て回る言っていた 一緒に来いと誘われたのだが、さっきまで回っていたのでさすがにお断りしておくことにした それから俺たちは律儀にも再び本部まで戻り、ロケバスでミコとユーナを再びインターフェイスに変えてから一般参加ブースを見て回るために表通りに出たところで営業二課の渡辺さんを見つけた 「渡辺さん」 挨拶しておこうと見慣れた後姿に声をかける 「あぁ若、丁度よいところに」 振り向いた渡辺さんは少しホッとした様子 「ん? 何か俺に用事?」 「はい。ですが私ではなく…」 「久しいなアキヒト」 渡辺さんの後ろから俺の名前が呼ばれる 後ろを覗き込むと不敵な笑顔の少女が一人 「観奈ちゃん」 「フッ、挨拶に来てやったぞ」 國崎技研の社長、 國崎 悠人氏の愛娘にしてランキング72位のファーストランカー、國崎 観奈ちゃんである 「久しぶりなのだノアール」 「ミチルさん…」 彼女の頭の上にはパートナーである『白い翼の悪魔』、ミチルちゃんが乗っている 「久しぶりだな。たしかアメリカに行ってたんだって?」 「うむ、NY大会が目的だったのじゃ。なかなかの猛者ぞろいで楽しかったぞ」 楽しかったか…相変わらずカッコいい性格してるなぁ… 「優勝したんだろ? 大したもんじゃないか」 「む…ただ心残りがあっての」 心残りってか? 「むこうで戦ってみたい者がおったのじゃが、奴はもうアメリカにはいなくての…」 ほう、観奈ちゃんに注目される相手か… 「気になるな。誰なんだ?」 「アキヒトも多分知っておるじゃろ。アルティ・フォレストじゃ」 「……………」 「どうした?知らなかったのか、この大会にもエントリーしとるはずじゃぞ」 「ミュリエルとのバトルが楽しみなのだ」 知ってるよ よーく知ってるよ あ~んなとこやこ~んなとこまで知ってるよ… まぁ、いたいけな少女相手にそんなこと言える訳でもないけどさ 「わらわ達はCグループじゃからの。上手くいけば奴とは決勝リーグの二回戦で当たるというわけじゃ」 腕が鳴るのうと気合満々の観奈ちゃん 「…明人さん…お久し…ぶりです」 「うわぁ!!」 いままで気づかなかったが観奈ちゃんの後ろに一人の女子高生が立っていた 「…すいません…驚かせて…しまったようで…」 「あ…あぁ、いえ、こちらこそすいません」 さっきからいたのに気づかなかった俺のほうが悪いと思うんだが彼女は丁寧に頭を下げてくれた 「えぇ~と………どちらさまでしたっけ?」 その上俺はこの人のことを憶えてないのだ 俺って無礼者? 「…憶えて…いないのも…無理は…ありません…およそ…七年ぶり…ですから…ね」 七年ぶり…ん? この独特の話のテンポは… 「もしかして…斗小野会長のお孫さんですか?」 「…はい…斗小野 水那岐…です…」 驚いた 何にって…彼女の容姿は七年前の社交界で会った時とそっくりそのままだったのだ え~と、確か俺より二つぐらい上だったように記憶していたんだが… 「…ほんと…お久しぶりです…とは言っても…明人さんの…活躍は…いつも…メディアで…拝見…させて…もらって…いますけど…」 「あぁ、それは恐縮です…えと、水那岐さんも武装神姫、始められたんですか?」 彼女の両肩にはジルダリアとジュビジーが 「…ええ…まだ…始めた…ばかりですが…二人とも…挨拶…」 「やっほー。私は火蒔里。ひじりんって呼んでね♡」 「花乃ともうします。明人さんにノアールさんですね。お二人のことは存じております。御会いできて光栄です」 眩しい笑顔で手を振るひじりんと礼儀正しくお辞儀をする花乃ちゃん 「そりゃどうも。もしかして二人も大会に出るんですか?」 「…ひじりんは…アクシデントで…出れなく…なりましたけど…花乃が…頑張って…くれて…います」 「それじゃあ今のところ…」 「…ええ…次は…Iグループの…三回戦です」 ルーキーなのに大したものだ こう見えて水那岐さん、センスあるのかもな… 「それよりもノアールだけでミコとユーナの姿が見えんが…」 いつのまにか美子にだきしめられている観奈ちゃん 「あ、あいつらは…」 アナタを思いっきり抱きしめてますよ~とも言えないよなぁ… つぅかお前は何やってるんだよ美子!! (だって可愛いんだもぉ~ん♡) 目線で返事をするな 「二人は御爺様のお手伝い中ですよ」 ノアのナイスフォロー 確かに嘘は言ってねぇよな… 「ふむ、だからアキヒトはこんな美少女を二人もたぶらかしていたと…」 ジト目になる観奈ちゃん いや、誤解だってば たぶらかしてねえし、噂のお二人はここにいますってばよ 「まぁ、わらわが言うのもおかしな話だがな…」 と、微笑交じりの最後の言葉がひっかかったが… 「それで、解説者様がこんなところで何をしているのじゃ?」 「解説は決勝リーグからだからな。今日はこれからおたくのブースでお菓子でも作りに行こうかと」 「なに、まことかっ!? それならば共に来るがよい。わらわも恋人に会いに行くところじゃ」 「恋人?」 おませさんですね、最近の小学生は… 「うむ。おぬしに劣らず男前じゃ!」 いや、観奈ちゃんの恋人だろ? 小学生か、少し年上でも中学生くらいだよな… それと比較さてれも複雑な気分だぞ 「ほら、行くぞ!!」 観奈ちゃんに背中を押され、俺たちは國崎技研のブースへと向かったのだった 追記 鳳凰杯、警備隊本部 「いまのところイベント進行は順調なようだねミス・桜」 「フェレンツェさん。えぇ、なんとか予定通りに進んでいます」 「そうか、それは何よりだよ。私はお祭りが大好きでね」 「あなたの周りはいつもお祭りのようですけどね」 「ハハハ、確かに」 「娘さんとご一緒しないんですか?」 「なに、急がなくても祭りは逃げやしないよ。私は責任があるのでね。万が一の事態に備え様子を見に来たんだよ…」 「インターフェイスですか…大変ですね」 「なに、理解ある協力者達が助けてくれている。私は幸せ者だよ」 「そうですか。なら、私もその協力者としてここの警備指揮はまかせていただきます。どうぞ祭りをお楽しみ下さい」 「…ホントに私は幸せ者のようだな。ここはお言葉に甘えるとしよう。古き友や知人がブースを出しているものでね。娘と挨拶に行ってくるよ」 「そうですか。では楽しんでいらしてください」 「君もよい祭りを…ミス・桜」 続く メインページへ このページの訪問者 -
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先頭ページへ 装備構成解説 マイティ超高速巡航装備 軽量飛行装備 機動戦闘装備 シエンATパイロットスーツ装備 クエンティン瞬間移動装置活用装備 マイティ 超高速巡航装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ 胸部:FL012胸部アーマー 背部:リアウイングAAU7 エクステンドブースター×2 VLBNY1スラスター×2 ランディングギアAT3(補助スラスター付バージョン)×2 ポラーシュテルン・FATEシールド×2 VLNBY1増設ラジエーター VLBNY1携行小型タンク ぷちマスィーン・シロにゃん (GEモデルLC3レーザーライフル) 上腕部:VLNBY1腕部アーマー 下腕部:左/FL012ガードシールド、右/M4ライトセイバー 大腿部:VLNBY1脚部アーマー 脹脛部:VLNBY1収納ポケット 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: スティレット短距離空対空ミサイル×4 カッツバルゲル長距離空対空ミサイル×2 STR6ミニガン、もしくはアルヴォPDW9 登場時期:「強敵」~「固執」、「ねここの飼い方、そのじゅうさん、後半」 対アラエル戦、クエンティン遭遇戦の序盤など、初期によく用いられた構成。まだ煮詰まっていない段階の、雛形とも呼べる構成が対ルーシー戦でも登場している。 ありったけの推進装備をリアウイングAAU7に取り付け、推力を一方向に向けることで絶大な加速と最高速度をたたき出すことができる。推進器の取り付け方には変遷があり、後になるほどパワーロスが少なくなる(写真は初期の配置)。装備も射程の長いものを中心に取りまとめ、特に最終段階で片翼に懸架していたLC3レーザーライフルの長時間照射は前方の目標掃討に効果が高い。 本装備はアーンヴァルのもともと持っている高速飛行性能をさらに特化させることに成功しているが、同時に欠点も倍化させてしまっている。小回りはもちろん利かず、片腕にライトセイバーを付けているとはいえ近接戦闘は原則ご法度。さらに推進設備を全てリアウイングに集中させているために、推進器がどれか一つでも損傷してしまうとたちまち全体バランスの低下を招き、戦闘力が大きく削がれてしまう。バトルにおいてどんなに性能の高い神姫といえど、一発も被弾せずに戦う、などというのはほとんど無理な話なのである。 良くも悪くもピーキーに着地する結果となり、これ以上の発展を見込めないと判断したマイティとマスターは、飛行能力というアーンヴァルの特性を生かしたまま、より戦闘に適応する装備構成を模索してゆくことになる。 試行錯誤の末、現在以下の二つの構成が登場している。なお、すべての装備にほぼ例外なく取り付けられているぷちマスィーン・シロにゃんは、主に装備の制御や索敵などを担ってマイティの負担を軽減する、いわばフライトオフィサーである。 軽量飛行装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ(棘輪) 胸部:FL012胸部アーマー(争上衣、ぷちマスィーン・シロにゃん搭乗) 背部:白き翼 上腕部:VLBNY1収納ポケット(なし) 下腕部:M4ライトセイバー×2(FL012増設アーマー) 大腿部:ハグダンド・アーミーブレード(なし) 脛部:ランディングギアAT3(脚部機能停止のため排除) 武装: カロッテTMP (忍者刀・風花、ぷちマスィーン八体) ※( )内は「信念」における装備 登場時期:「固執」、「信念」、「ねここの飼い方、そのじゅうさん、後半」 もともと白き翼のテストのために考えられた構成で、翼の性能を最大限に生かすためかなりの軽装となっている。クエンティン遭遇戦においては「装備B」として、変更されたフィールドに対応するために登場した。また「信念」の対クエンティン戦においては、序盤はストラーフのリアユニット GAアーム、GAレッグを用いた陸戦特化装備であったが、戦闘中脚部機能が死んでしまったために脚部を丸ごと排除して本装備となった。その折もともとの素体装備は変更していないため、防御力重視の構成となっている。 軽快さを生かした格闘戦が得意であったが、性能的にどうしても中途半端にとどまってしまうくせがあり、メイン装備としてはほとんど使われていない。 機動戦闘装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ 胸部:ホーリィアーマージャケット 背部:レインディアアームドユニット・タイプγ(基部) ハイパーエレクトロマグネティックランチャー×2 バインダー(リアウイングAAU7) ハグダンド・アーミーブレード ぷちマスィーン・シロにゃん 下腕部:M4ライトセイバー×2 脛部:ランディングギアAT3 FL012ガードシールド 推進器付主翼(リアウイングAAU7) 武装: アルヴォLP4ハンドガン カロッテP12 スティレット短距離空対空ミサイル×4(サイドボード供給により発射可能総数は60発以上) 登場時期:神姫たちの舞う空編 アーンヴァルの飛行特性を維持したまま、戦闘適応性を上げるために考案された構成。メインの推進力が背部ではなく、脚部に移行されているのが大きな特長。ヨーロッパの軍隊によく見られるデルタ翼戦闘機のようなシルエットとなっている。 超高速巡航装備と比べて推進力は低下したものの、全体的にコンパクトにまとまっている。そして主翼が360度回転可能で、マグネティックランチャーとバインダーが四つのスタビライザーの役目を果たし、デルタ翼でありながら「低速域における機動性と安定性が低い」という欠点をカバーできている。結果、戦闘機にはできない奇想天外なマニューバーが可能になっている。 なによりも、ホーリィアーマージャケットの小型スラスターやマグネティックランチャーの電磁浮遊推進システムなど、脚部以外のボディ全体に推進器を配することによって、多少の損傷でも戦闘が続行できる優秀なダメージコントロール性能を獲得できたことがこの装備の功績として大きい。 未知数の部分がまだまだ多いが、本編における今後の活躍が大いに期待できる装備構成である。 シエン ATパイロットスーツ装備 頭部:頭甲・咆皇 胸部:VLBNY1胸部アーマー 上腕部:VLBNY1腕部アーマー 下腕部:VLBNY1リストガード 腰部:KT36D1ドッグテイル 大腿部:VLBNY1脚部アーマー 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: 十手 カロッテP12 モデルPHCハンドガン・ウズルイフ 登場時期:「バトリングクラブ」、神姫たちの舞う空編 非公式の「ボトムズin武装神姫バトル」において、クリムゾンヘッドに搭乗する際シエンがまとう装備。ヴァッフェシリーズのアーマーは衝撃吸収に長けながらかさばらないため、パイロットスーツとして最適であった。 緊急時の武装として十手や拳銃をコクピットに持ち込んでいる。 ちなみにクリムゾンヘッドの主武装はベルトリンク式に改造し装弾数を増やした咆莱一式である。 クエンティン 瞬間移動装置活用装備 頭部:フロストゥ・グフロートゥ 黒ぶちメガネ 胸部:胸甲・万武(ぷちマスィーン・壱号搭乗) 上腕部:フロストゥ・クレイン 下腕部:FL013スパイクアーマー01 腰部:VLBNY1腰部ベルト 大腿部:FL013スパイクアーマー02 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: サイズ・オブ・ザ・グリムリーパー ぷちマスィーン・肆号 ぷちマスィーン・オレにゃん 登場時期:「固執」、「信念」 瞬間移動装置とは厳密には装置ではなく、バーチャルバトルアクセスシステムの隙を利用した高速移動方法であり、あたかも瞬間移動しているように見えるためそう呼ばれる。また本装置によって空中移動も可能である。クエンティンのオーナーである理音が考案しセカンドバーチャルバトルにて使用していた。本装備はその瞬間移動を最大限活用するための構成である。 頭部、上腕部のフロストゥブレード、および下腕部、大腿部のスパイクアーマーは可動し、四肢とあわせて動かすことで限定的ではあるが瞬間移動後のアクロバット機動や体勢安定のためのバインダーとして働く。 主武装がサイズ・オブ・ザ・グリムリーパーと二体のぷちマスィーンだけというやや心もとない内容だが、これは瞬間移動装置の構成上サイドボードに神姫本体を入れねばならないため、武装の容量が限られてしまうためである(開始時の武装を入れるメインボードは空であるが、アクセスポッドには神姫が入れられていないため、武装を入れてもシステム側から「装備不能」と判断されエラーが発生する。そのためメインボードは使用できない)。ただ、瞬間移動のアドバンテージが非常に大きいため、この武装だけで十分という見方もある。 その後どこからともなく(おそらくネットから)瞬間移動の方法が解析され数多くの神姫がこの方法を使用したが、ゲームバランス崩壊の兆しが見えたためにオフィシャル側によってバーチャルバトル空間アクセスルールが改正され、実質使用禁止となってしまった。 そのためクエンティンの本装備はおそらくもう見ることは無い。 先頭ページへ
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ホワイトファング・ハウリングソウル 第十九話 『砕かれた未来~The broken future~』 時は少し遡る。 ぽつりと、アメティスタの頬に水滴が当たる。 それが都か或いは自分の涙か、それとも雨か・・・アメティスタにはわからない。 「・・・・言いたいことは、それだけ・・・?」 都は、そういうと右手を大きく振りかぶる。 「駄目だ! マスター!!」 「マイスター!!」 都がやろうとしていることを理解したハウとノワールが止めようとするが、もう間に合わない。 大きく振りかぶられた右手は、ほんの一瞬、躊躇するように止まってから 「――――――――――――――!」 勢いよく、振り下ろされた。 ・・・・・・・・アメティスタは、ゆっくりと目を開ける。 自分の体がまだ無事であることに疑問を覚え、横を見る。 そこには都の手があった。 「・・・・壊さないの?」 その手をみながら、彼女は言った。 都は何も言わない。 「・・・・ボクは、キミになら壊されてもいいと思ってたんだけど」 「・・・・・・・・・・いだろう」 と、都が何かを口にする。 「・・・・殺せるわけ、無いだろう・・・!」 都は・・・都は泣いていた。 雨の中でも判るくらい、泣いていた。 「どうして? ボクは武装神姫・・・ただのオモチャだ。それに殺すんじゃない。壊すんだ」 「・・・私は、ハウとノワールを家族だと思ってる。・・・・サラとマイは友達だ・・・!」 「ボクたちを人間と区別していないのか。それは単なる誤解と錯覚だ。ボクたちとキミ達じゃ根本的に・・・・」 「そんなことは判ってる」 都はそういって、アメティスタを押さえつけていた左手を離す。 「・・・・・でも、殺せない」 「・・・・なぜ?」 「・・・・そんな泣いてる奴を、殺せるか」 言われてアメティスタは始めて気づく。 彼女の頬は・・・涙で濡れていた。 「・・・・・・・・・どうして」 「そんなもの私が知るか・・・畜生ッ!」 そういうと都は持っていた石を川に向かって投げつける。 大きな音がして、小さな水柱が上がった。 「・・・よかった。マスター・・・」 「・・・・ん」 と、都を止めようとしていたハウとノワールが溜息をつく。 「・・・悪かった。ついかっとなってな」 その様子を見て都はすぐに謝った。 間違いを起こす前に本気で止めようとしてくれたからというのもあるが、やはり心配をかけたからだろう。 都が謝り、発言するものがいなくなり場を静寂が包む。 その静寂を破ったのはやはり都だった。 「・・・・お前、壊れてなんていないだろう」 その言葉はアメティスタに向けられたものだった。 「・・・・どうしてそう思うのかな?」 都の言葉にアメティスタはそう返した。 「簡単だ。お前、私を怒らせようとしてたな? 昔の事を思い出させて怒らせて・・・自分が真犯人だって言って。そんなことを言われたら私がどうなるか、判っていたんだろう? 小さな予言者さん」 今までのお返しとばかりに皮肉たっぷりに都は言う。 「どうなるか判ってて何故私にそんなことをするのか。何故罪の告白がしたいのに、相手を怒らせるのか。それが判らなかったが・・・お前、もしかして殺して欲しかったんじゃないか」 アメティスタは答えない。 しかしそれは肯定と同義の無言だった。 「さっきの話だと“壊れてるからアシモフコードを無視できる”はずだ。だったら自殺だって・・・できるはずだ。じゃぁなんで私に殺させようとする? それは・・・お前が壊れてないからだ」 「穴だらけで推理とも呼べない。それは殆どがキミの妄想と傲慢と身の程知らずから来た考えにしか思えないね」 ようやくアメティスタが口を開く。 「そもそもボクが自殺したがってるって根拠は何さ。それにボクは衛にぃを・・・殺した。これで壊れていないわけが・・・」 「アシモフコードが未来予知とか、そんな事にまで対応できるわけ無いだろう。元々コードには抵触しないんだよ。・・・・衛のことはな」 「・・・・ボクが見た程度の事じゃ、マスターの死に直結するとは判断されなかったってこと?」 「そうだ」 都は肯く。 アシモフコードは今更言うまでもなくロボット三原則の事だ。その第一条・・・『ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危害を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない』にアメティスタの予言は抵触するか否か。 するわけが無い。 それはまだ起こっていない事、起こるかどうかすらわからないこと。 そして何より・・・予知は果たして神姫のアシモフコードに認識されているかということ。 「アシモフコードに認識されなければそれはプログラム的には“無い”ことにされるんだろう。もともと予知そのものがイレギュラーな要素だから認識されないのはある意味当然といえる」 「・・・つまり、あれは不幸な事故だったというの?」 「そうだ。アイツが死んだことで、誰か悪者を作り出すなら・・・車の運転手以外にだれもいやしないってことさ」 都はそういって黙る。 雨は、少し酷くなってきていた。 「・・・キミはそれで、納得できるの?」 「理解できないものに何か理由をつけ、理解した気になる。それが悪いこととは言わないがね。納得するさ。だってあそこで・・・私の目の前で起きた出来事には、お前が介入する余地なんかないんだから」 都は迷い無くそういいきった。 それは・・・アメティスタの罪を、許すといっているのと同義だ。 「・・・はぁ。また死に損なっちゃった。いい加減、衛にぃの所に行きたいんだけどな」 「やっと本音を言ったなこの馬鹿魚」 アメティスタのその言葉に、都はキシシと笑う。 その笑顔に偽りは無く・・・本当に楽しそうだった。 「・・・なぁ。お前、今何処に世話になってるんだ」 「山下りたとこにある神社だよ。・・・・ボクを引き取るってんならお断りだよ。ボクは今のこの生活が気に入ってるんだ」 「お見通しか」 「・・・ま、たまには遊びに行ってもいいけど」 「・・・・クク、素直じゃないな」 そういって更に笑う都。 雨はもう・・・・降っていなかった。 前・・・次
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あの、白い刃を持った同類の少女。 ただ、違うのは、彼女は強い。 そして、自分の中のパルスが、沸き立つ。 ―――ああ、私は武装神姫なんだなと、思った瞬間である。 ちゅんちゅんちゅん 冬は過ぎ、春が来たと言うのに…………まだ寒い、そんな三月手前の日。 「ん……んうう?」 どれどれ……まだ寝ておるな、ふふ 「……?」 ふむ、やはり夜討ち朝駆けは基本だな、どれどれ。 さわ、とこう、暖かい感触が、なんと言うか。 「うおっ!?」 寸前で目を覚まし、慌てて頭を振る。 「……ち、起きおったか」 「ディス……なにしてんの?」 ズボンは下げられて、こー、危険一歩手前、というか、まあ、朝の元気の象徴が。 「――――神姫たるもの、朝の奉仕は基本だろう?」 艶かしく、舌をちろ、と魅せる。 「……勘弁してくれ」 流石に前屈み、仕事前に精力抜かれたらたまらん。 「―――残念じゃな」 ふ、っと笑う、ディス……ってこー上目で見るなこー欲しそうにっ、あー、あー!? 「天国に、連れて行ってやるぞえ?」 ちょっと、揺れた、というか更に危険領域にっ!? 「―――」 殺気、つーか、ピンチ!?、助けてピンチクラッシャー!? 何見てるつーかいつの間にか起きたんですか碧鈴さん!? 尻尾立ってるし、こー、なんだ……髪の毛逆立ってるっていうかこー!? 「マイロード」 爽やかで、朝の起きるときに相応しい、優しい声 「は、はひ」 即答且つ、瞬時に背中を正す。 「…………天国へ行きましょうか?」 砲莱向けながら言わないでくださいっつーかだんだんと近寄らないでー……って、え? 「……」 凍ってる、碧鈴さん……。 「……ふふふ」 笑っている、ディス。 「ん?」 ……えーっと、まあ、なんだ、原因は朝で寝起きで、そしてそのまま起立なんてしてたから―――― 「―――せ、せいよくのごんげっこのへんたいすけべしんきになによくじょうしてるんですかこのどへんたい ぽるのやろういいかげんにしてくださいもうだいたいじゅんじょからいえばでぃすよりわたしがさきというか わたしもまいろーどがのぞみならいくらでもというかこれじゅうはちきんれーといいんですかいいんですなら いろいろされるのもやぶさかじゃないですというかむしろしてくださいというか」 と、真っ赤な顔でぶつぶつという碧鈴。 「???」 正直、わけがわかりません。 「……碧鈴、本心までだだ漏れだぞ」 ディスは、どーやら聞き取ったらしい。 「―――」 ぼふん、っと顔を真っ赤にした、碧鈴は 「―――きっ、記憶を失えっ、まいろーどっ!?」 周囲に、大量の影……これは、ぷちマスィーンズ、うちにいるのは24体。 「24体……セット、一斉射撃……ファイエル!!」 職場の仕事を終え……取りあえずエルゴへ、ディスの顔見世もしないとな、と。 ……あ、れ? 「有難うございましたー」 なんで、俺、爽やかに、店員さんしてるん、だろ。 「……あむあむ」 碧鈴はもしゃもしゃ、と頭の上でポテチ一袋を貪っている、機嫌よく、尻尾を振って。 買収されたな……。 いきなり先輩に、ちょっと店換わってくれって言われてやってみれば―――はぁ ……まあ……それが「G」の仕事ならしょーがない。 とらぶった時には力になるのが俺の仕事だ。 「どないしはったん、はーちゃん」 「ちゃん言うなラスト」 「この体のときは、凛奈って呼んでくれいうたろ?」 耳を引っ張られる、いだだだ……こいつは、Dフォースのラスト。 現在は「人型なんとか」に入ってるらしいが興味はない、というかまあ、別になんとも…… 俺の厄介な上役様の一人、というかぶっちゃけ、Dの面々のぱしりの俺は立場が弱い。 「……で、凛奈さん、どしたの?」 「んー、ちいとな、働いてる若人に、お礼っちゅーやつや」 手には缶コーヒーがほかほかと湯気を立てて。 「あ、ありがとうございます」 ふう、と客も引いて、ひと段落ついた時なので、ありがたく口をつける。 「ぶううっ!?」 「ん、どしたー、乙女の入れたコーヒーが飲めへんかー?」 「……何入れました?」 「んー、そやねえ、マムシドリンクとか、本当は夏はんに使って後押ししよーかと思うてたんやけど」 ん?……彼女でもいるのかなあ、先輩さん。 「……そっちに、D-ソード、行ってるやろ?」 あ……ああ……なるほど、秋奈さんカスタムしてたんだから D、として使う気だったのを、俺に? 「まあ、今はディス、ですけど」 「……折角なんで暴走させて碧ちゃんと一緒に食べたらおいしそうかなぁ、と」 「怒りますよ?」 苦笑、この人はいたずら好きだ、知っているが性質が悪い。 「あはは、じょーだんや、疲れきった顔してるから、栄養ドリンク」 「……はあ、まあ助かりますけど……」 「マイロード」 碧鈴が、頭をの毛を引っ張る。 「ん、どうした?」 「……子供のないている声が」 「らじゃ、ラsじゃない、凛奈さん、ここ、任せます」 「了解~」 碧鈴の指示で、二階のバトルスペースへ 「……うわぁ、あ、やだ、やめてよぉ」 どうやら、子供を泣かすやつが居るようだ。 「へっへっへ、しょっぱいパーツ使ってるぜ、全くよお」 「仕方がナイでゴザルよ、餓鬼でゴザル」 あー、癇に障る声だ、こーいうの嫌い。 「何してるんだ?」 その辺に居た子供に聞く。 どうやら、こー、バトルロイヤルで力任せにサード上位の二人組みが、下位の始めたばかりの子を嬲っているらしい。 「ほら、ほら、逃げないと死ぬでゴザルよー?」 眼鏡を掛けた肥満体の男の操るアーンヴァルが足を打ち抜き。 「……あぁ?、ほらほら、舐めてるのか、ああ?」 茶髪を逆立てたモヒカンのストラーフが、相手の腕を、もぎ取る。 ――――見ちゃ居られん。 正義でもないが悪でもないが。 ―――これは、見ちゃおれん、だが全く戦闘訓練の無い、碧鈴を連れて行くには、と思った瞬間。 「儂を呼んだか、主?」 白い悪魔が、囁いた。 徒然続く、そんな話。 第六節 彼の理由、私の理由。 節終 続く 戻る
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紅い巨神・・・皆川が『ギガンティック』と呼んだそれは、バーチャルの空に向かって大きく吼えた 自らが生まれた事を誇る様に、或いは、呪う様に・・・ 「か・・・墨?なの・・・?」 『ギガンティック』の黄金の瞳がニビルを見据える ごうっ!! 「!!」 その一撃をかわせたのは全くの偶然だった 体が反射的に逃げた方向に、偶々手が来なかっただけの話で、攻撃そのものは全く見切れたものではなかった・・・それが左の爪を振ったのだと気付いたのすら攻撃直後だった その動きの速さは『G』の「Gアーム」・・・キャロラインが「ジェノサイドナックル」と呼んだ・・・に匹敵するものだった 神姫に十数倍するその体躯で神姫の最高速度近い攻撃を繰り出してきたと言う事は、この巨神が神姫を遥かに上回る速さを持っている事を意味した 「・・・あ・・・あぁぁ」 それは絶望的な戦力差と言わざるを得なかった 「奈落の底」 「画面が見えない・・・姉さま、どうなったんだろう?」 皆川は、機械をチェックすると言って出て行ってしまった 残されたランカー達は、各々露骨に不満そうな顔をしながらも、その場に皆留まっていた というのも、画面自体は見えないが、バーチャルスペースで戦闘の様なものが行なわれていると思しき音や気配がやまなかったし、ジャッジマシンがいかなる結果もまだ伝えては居なかったからであろう とはいえ、それだけの情報量ではヌルの不安感を拭い切るにはとても足りなかったのであるが 「クイントスさま・・・」 「・・・・・・やはり行く事にしよう」 「え?」 覗き込んだクイントスの表情は硬かったが、どこか嬉しそうでもあった そう言ってクイントスは華墨側のオーナーブースコンパートメントに向かう 「っ・・・待って!私も行く」 会場の誰も、ふたりが抜けた事に気付いていないようだった 明らかな戦力差だったが、ニビルは何とか回避し続ける事が出来た 何故か、使い切った筈の「ゴールドアイ」が復活したからだ それも、いつもより予見が冴えている 同時に判った事は、『ギガンティック』がほぼ「ジェノサイドナックル」「ゴールドアイ」に匹敵する速さと、先読み能力を持っている事であった (かわす事は出来ても反撃は無理ね・・・せめて空戦装備があれば話は違うのだろうけど・・・) 振り下ろされた右腕が大地を割る! 追跡してくる脚力はさながら「ジェノサイドナックル」の脚版だ、歩幅と相俟って、殆ど瞬間移動とも言える速さで移動出来る様だった (駄目、もうかわしきれない!!) 瞬間、『ギガンティック』の動きが止まる 空を見上げる様な仕草をし、どこか、ニビルに見えない遠くを見ている様だった ごつん!! 扉に剣戟で穴を開けて潜入する 強引だが、取り立てて気にした様子も無く、クイントスは佐鳴武士が居た筈のコンパートメントに足を踏み入れた そこに武士は居ない 代わりに、バトルポッドの前に、身長170センチ程の『ギガンティック』が佇んでいた 「!?」 ヌルの驚愕を無視して、クイントスが走る 「会いたかったぞ・・・!!」 ごうっ!! 剣速に音を引き連れて、クイントスの刀が鞘から引き抜かれる その一撃は、これ以上無い程明確に体格差のある『ギガンティック』の爪を一振り斬り飛ばし、刃先には一切血曇りを残さない程だった 怯んだ様子すら無く、ニビルも驚いた「ジェノサイドナックル」ばりの速さで殴りかかる『ギガンティック』・・・それを、クイントスはすんでの所で回避した 外れた拳で床が抉れる 見る迄も無い、神姫が喰らえば全壊は免れ得ない一撃だ・・・恐らく人間でもひしゃげるか、体の一部が捥げるだろう 「まだ自分の体の使い方が判っていないのか・・・?それとも所詮『まがいもの』なのか・・・?そんな程度では」 長い腕の下に潜り込み、合計4撃、極悪無比な音速剣が炸裂する それでクイントスの刀はへし折れたが、同時に『ギガンティック』の五体もバラバラに引き裂かれた 胸から大量の、人間のそれと同じ赤い血を噴き出しながら 「どんな強力な武器を持とうとも・・・それを扱う者が弱者では話にならないという事だな『華墨』とやら」 『ギガンティック』となっていた武士の胸に華墨が浮き上がり、剥離してゆくのがヌルには見えた 『よう華墨、しっかりしろよ』 (マスター?どうしたんだ一体) こんな所でぼさっとしてんなって!ニビルを倒して、クイントスに一泡吹かせてやるんだろ? 『勝とうぜ、俺達二人で!』 (あぁ・・・そうだな、そうだった、二人で勝つんだったな・・・『クイントス』に) そこは暗い奈落の底 漆黒の闇なのか、混沌なのか だが『私』は既に寄る辺無き花ではない 立ち上がり、歩き出す マスターが居てくれる・・・ならば取り敢えず、歩く道は判る だから、私のマスターで居て下さい・・・佐鳴武士 目を開けると、そこはどうもメディカルセンターの様だった 「目が覚めたみたいだね」 振り向くとそこには琥珀嬢とエルギール、それと、ニビルが居た 吹き込んでくる風が、季節の移り変わりを感じさせた どうも、私の認識から季節がずれている様に感じる 違う!季節はそう簡単にずれない、いかに今年は春が短かったからといって、この空気は私が知っている昨日迄と全く違う では、ずれているのは私の認識の方か・・・私の・・・認識・・・? 「マス・・・」 『マスターは何処に?』と聞こうとして、頭に激痛が走った 待て、待て待て華墨、お前は何か重大な事を忘れていないか・・・?何かとても重大で、そしてとても、巨大な何かを!? 「君のマスターは此処に居る、僕だ、僕神浦琥珀が、君のマスターだ」 それで、私の知る限りの全てを思い出した 「佐鳴武士は・・・死・・・」 吐いた 何かを そこで、自分のもうひとつの異常に気付いた 「君はね、普通の武装神姫では無くなってしまったんだよ・・・華墨」 「今の君は、人間とそう変わらない体を持っている、食事をし、排泄をし、呼吸をする体・・・機械と生体のハイブリッド・・・君は・・・」 吐いた、転げ回った 何も聞こえない 何も判らない 聞きたくない!!! 「落ち着きなさい!受け入れ難いのは判るけど!取り乱しても何にもならないッ!!」 ニビルに頬を張られて、動きが止まった 頭の中が真っ白になっていた ただ涙だけは出た 語る言葉も何も無く、ただ、溢れた そしてそれが、他ならぬ私自身に、状況を思い出させていた 「・・・・・・暫く一人にさせてあげよう、ニビル」 出て行く直前に、エルギールが私を見たが、それに対して何かを返す余裕は、今の私には全く無かった 「マスター・・・・・・!!」 その悲鳴に近い声は、涙と共に奈落の底に程近い今の私の心に大きく波紋を浮かべ、虚空に虚しく消えた・・・ 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ